あのクリエイターに今、ききたいこと。 倉本仁さん/プロダクトデザイナー

2017年 4月 17日 15:00 Category : Design

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クリエイターの何気ない会話を通じて見えてくる人となりや、
その人なりのモノゴトの見方、とらえ方。カメラを持ってふらっと出かけて、
プロダクトデザイナーの倉本仁さんに、今、ききたいことをきいてみました。
2017.4.12

──こないだ、ミラノサローネ行ってましたよね。
そう。日曜日に戻って、完全にあれなんですよ。時差ボケで。昨日もちょっと30分だけ寝ようと思ったら、2時間半くらい寝たよね。事務所で。

──サローネの展示はACG旭硝子のブースで? 太鼓みたいな作品?
ガラスに触る“Touch”というテーマで制作した作品を展示をしたんだけど、ガラスでできた太鼓だけじゃなくて、ガラスでできたシーソーとモビールの3作品を作った。チームプロジェクトみたいになってて、ロンドンのロウ・エッジズと話しながら合わせて5作品を発表。ロウ・エッジズは、ワイヤーメッシュがあるでしょ、窓ガラスに入ってる。あのメッシュを自在に編んでガラスに入れていくプロジェクトと、ガラスがぐるぐる回って絵を描くと楽しいという2作品を出して。

2017年のミラノサローネで発表した「Touch presented by AGC Asahi Glass」のための作品。ガラスでできた「SEESAW」。

──ロウ・エッジズには、仁さんが声をかけた?
AGCさんが、日本人と海外の人と、2、3者で空間を構成したいと思ってたみたいで、まずは日本にいるウチにコンタクトがあった。そこで「海外の人は誰を考えてるんですか」って聞いたら、ロウ・エッジズがリストの一番上にあって。逆に「どうですか?」って聞かれたから、「最高でしょ」と。でも連絡先がわからなくて、エル・デコの木田さんに聞いたら「いいわよー」って紹介してもらいました。あとで思えば、ロウ・エッジズと元さん(プロダクトデザイナーの鈴木元さん)がRCAでクラスメイトだったから、そっちからも繋がってたんやなぁと。

──1者じゃないほうがいい?
クライアントが2者にしたかった理由は聞いてないけど、2者でやったことで僕は楽しかった。プロジェクトに2者というか2つの人格があると、主張のしあいでうまくいかなかったり、失敗すれば失敗するなぁとも思うけど、お互いの意見をポジティブに乗せていけるので、今回は仕事しやすかったし、楽しかった。お互いフランクで、電話で「このアイデアあり?」とか相談できるのもよかった。いい人なんよね。

──最近はどんなプロダクトをデザインしてますか?
家具が多いし、家電が多いし。それに去年はホンダのクルマのプロジェクトがあったり。最初は車のインテリアデザインの依頼をもらって。僕はクルマもすごい好きなんで、、これはいいチャンスやと思い、期間を多めに3ヶ月もらって、エクステリアもまとめてデザイン提案。気に入ってもらえたことで3ヶ月のプロジェクトが半年になって、さらに半年延びて、1年くらい。クルマのフルスケールモデルを制作するのも初めての体験でおもしろかった。

──それって最終的には?
クルマの仕事をやっているという話はしていいけど、内容は言えないんですよ。とかね、やっぱり家具が多いですよ。最近は海外の家具メーカーの仕事も多くて。スウェーデンのOFFECCTとか、まだ発表してないんで言えないけど、スペインやドイツ、デンマークのメーカーとも仕事してます。

天然由来の麻繊維から生まれた、厚さ2mmのシート状の材料でできた超軽量、高強度の椅子。OFFEECCT「JIN」。

──海外メーカーと仕事するようになったきっかけは?
昔からミラノサローネなんかへは行ったりしてたけど、海外メーカーとめっちゃ仕事したい、とも思っていなくて。依頼してくれる目の前の仕事を楽しみたいと思ってて。でもある時、友人のスウェーデンのデザイナーから「なんで海外でやらんの?」みたいに言われた。ただ「お前の英語はひどい。英語はマストだ!」とも。そこから英語の先生を探して、事務所に週2回くらい来てもらって、今はだいぶしゃべれるようになった感じ。海外で話してコミュニケーションできるようになったら、その環に入ってくる他の人とも話して、その人がメーカー紹介してくれたり。あのアドバイスでちょっとずつ広がって、世界がひらけた。でもちょっと前に海外の友達に「仁、また英語下手になってる」って言われて、英語の先生にいい方法ないか聞いてみたら、「それはあんた復習してないからや」って言われて。「1時間半英語やったら、1時間半復習しなさい」って。

──それって、いつくらいの話?
3年くらい前かな。4年かな。それまでは国内メーカーの仕事だけでした。

──もともと、金沢美大に受からなかったら大工になるつもりだったとか。
(地元、淡路島の)高校の時に友達が、島外の高校を中退して戻ってきて、屋根瓦葺きで働き始めたんすね。そこにオレも呼ばれて行くようになって、学校休んで行ってました。そんなに学校って出んでもいいでしょ、高校後半くらいになると。屋根の上で左官やってたら、屋根の下には大工がいて。休憩や昼食が一緒で、やっぱ大工さんの仕事かっこええなあと。これかもしれんって思って。

──でも美大を選んだ。
一般の大学受けてみようかなと思った時期もあったけど、中途半端に行っても意味ないかもって悩んでた時に、親が「美大、いいんじゃないか」って。オレ、絵が上手かったから「それは確かに」みたいな。それでも、絵を描いて暮らすっていうのもなんか違うし、大工みたいなことやりたいしなと思ってたら、おとんが熱心に調べてくれて、デザイン科があることがわかった。これは大工みたいでもあるって思った。

──美大受験は東村アキコさんの漫画「かくかくしかじか」みたいな?
絵だけはめちゃうまかったから、受験のための絵はほとんど描いてないんよね。小学校の頃から、美術と図工はマックスの点しかとったことないのよ。小学4、5、6年の3年間、写生大会の絵で県の最高賞を取り続けたりして、まあ、描くのが好きやったん。

──へー。
(出身の)淡路島の近所の肉屋のせがれが、芸大を卒業した油絵画家の人で。アーティスト肌であの時代にあの田舎で、黒髪長髪。その人が子供向けの絵の塾をやってて、そこに通ってた。絵を描く時間が2時間くらいあって、おやつの時間のあとに、ワイルドな遊びの時間があって。裏山に登ったり川で遊んだり、杉鉄砲作ったり。おもしろくて、同じクラスの男の半分くらいがその塾に行ってたかな。割り箸に墨付けて5分間だけ描くクロッキーやったり、静物水彩描いたり、ゴム鉄砲作ったかと思えば、ごりごりに石膏デッサンをやることもあった。好きで描いてるうちに絵が上手くなった。そのあと、中学で油絵を始めて、高校になるとバンドにはまって、絵を描かなくなるんやけど。

──先生の名前は?
てーちゃん。当時から「ワシのことを先生と呼ぶな、てーちゃんと呼べ」って言ってて。今でも描き続けてて、淡路島帰ったら時々会うんだけど。てーちゃんのアトリエ行って話してたら、その熱にあてられて、オレもモノ作りにもっと情熱を向けなあかんと思ったりして、自主的な個展をやってみたりもして。

──どんな人?
ふつふつと湧き上がる創作を続けている人。出会いがおもしろくて。近所では、変わった長髪の男がおるって有名だった。塾に入る前の小1の時、友達何人かで河原で花火して遊んでたら、川の向こう岸にてーちゃんのアトリエがあった。そのうちだんだん盛り上がって、てーちゃんのアトリエを狙うようになって、ロケット花火が1本、開いてる窓から入ったんよね。喜んでたら、オフロードのバイクが橋を渡ってやって来て「おまえらか、ワシの家に花火ぶちこんだやつは」って言われて、しょうがないから「うん」って。「花火全部出せ」って言われて出したら、バイクの前輪で花火をぐちゃぐちゃにして帰ってった。小学生相手にバイクで凄むっていう。

──それが出会い。
いや、まだ続きがあってね。そのあと、6年の子が「こうなったら徹底的にやるぞ!」って言い出して、家に戻って新しい花火を持ってきて。6人くらいで、てーちゃんのアトリエを取り囲んで爆竹と煙玉で一斉攻撃。「ドルーン!」ってバイクのエンジンがかかる音がしたから散り散りに逃げたんやけど、戻ってゲームしてたら一人足りない。「やっちゃん、戻ってこんな……」、「あいつ、捕まったんちゃうか……」って。20分くらいして恐る恐る見に行ったら、田んぼの真ん中で、やっちゃんが椅子にロープでくくりつけられてた。エアガン持ったてーちゃんが「おまえら出てこい」って叫んで、やっちゃんは泣きながら「オレにかまわず、逃げろ〜」って。そのあと、しれっと絵の塾に入るという。それが木田照夫っていう、オレの人生と絵の師匠。

倉本仁(Jin Kuramoto)
1976年兵庫県淡路島⽣まれ。1999年⾦沢美術⼯芸⼤学産業美術学科⼯業デザイン専攻卒業後、家電メーカー勤務を経て、2008年JIN KURAMOTO STUDIO設⽴。主なクライアントにOFFECCT、arflex Japan、Honda、Nikon、MEETEE、Smaller Objects。iF Design Award、Red Dot Design Award、Good Design Awardなど受賞多数。

Link
JIN KURAMOTO STUDIO
AGC旭硝子 ミラノサローネ特設サイト

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