あのクリエイターに今、ききたいこと。深澤直人さん〈プロダクトデザイナー〉

2017年 7月 13日 11:00 Category : Design

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──もうずいぶん長いこと大御所ですよね。
深澤:そんなことなくて、自分の立ち位置ってわからないですよ。60になりますけど、自分が60歳になったことも信じられないというか。

──ミラノサローネどうでした?
深澤:エレクトロニクスの展示会とかとは全然違って、サローネは家具中心のデザインの祭り。作品の発表の舞台として、1年タームで歩調を合わせて、そこを目指しています。常にそこを目指して、常に動き始めている感じですね。1年という周期だけじゃなくて「3年後はこのへんかな」って感じもある。重要な節目であるというのは、間違いないですね。サローネは、自分が手がけたデザインを包括している場所でもあって、全体を見るとザワザワして落ち着かないですね。迷っちゃうというか、一同に介しすぎてて。逆にそんな中、マルニ木工のブースみたいな場所が自分のベースというか、落ち着けていいですね。ほかにも、B&B ITALIAとか、自分の居場所という気がします。

──新作は、どんな使われ方を想定してデザインしました?
深澤:「HIROSHIMA アームチェア」が売れたからね。一般用途だけじゃなくてBtoB向けに大きな会社で使われて、世界中に出ていった。だからそういう意味で、レクチャーホールとかレストランで使うスタッキングが欲しいねってなって。HIROSHIMAファミリーを増やしている感じです。去年はステンレス素材を使ったけど、今回はマットでサテン調の脚にしました。それこそサローネに行くと、海外のディストリビューターたちが意見をくれる。「マテリアルがマットじゃないと売れないよ」とか「こういう木の種類じゃないと」といった声がサローネ会場で集まってくる。今回の新作は、それに応えました。サローネに出すことで、僕らがなかなか理解し難い海外の人々の感覚が、情報として入ってくる。お祭りで発表するだけじゃなくて、具体的で細かいフィードバックもあってそれが来年に活かされる。


──今回の反響は?
深澤:まず場所が良かったよね。マルニ木工の機能というか質感とか手触り、作りの良さは世界中が認めているので、それを目当てに来る人が多かったです。ジャスパーと僕が2人でやっているのもわかりやすくて、それを目当てに来る人も多かったと思います。僕は最初、マルニが生まれ変わる時に「何かやって」と言われて、デザインのディレクターで入った。最初はひとりで入ってHIROSHIMA アームチェアを出したけど、ジャスパーと気持ちも合うので「彼とだったら、加工技術を生かしてきっともっとやれる」と思って「一緒にやってもらえますか」と。隣で別々にやりながら「来年はなにしようかね」っていう話をしています。

──マルニ木工ならではの技術とは?
深澤:僕が彼らから学んだのは、材料の選定とか、材と材の組み合わせ。素材の性質とか知らないと、椅子とかテーブルってできないんですよ。デザイナーからすれば最初は材に興味があったけど、あとになって、背景のほうが大きいと知りました。例えば椅子を何千脚も作るには、世界中から木を買ってこないといけないわけです。そういうバックボーンが整っている。椅子の材料は、東急ハンズで買ってこれるわけじゃなくて、大トロをいつも持っているみたいな。あれだけの材をストックして持っていることが、そもそも大きいですね。僕らがやったことを実現できる、彼らの経験値と力。HIROSHIMA アームチェアの左右の肘かけの木目模様が合っているとか。木って削ってみないとわからないし、ダメなら弾いたり、それを「ふしとカケラ」として再生したり。

ふしとカケラ/伊勢丹新宿店の特別企画として、マルニ木工が、minä perhonen とともに、2013 年、2015 年に開催。大量生産社会の中で、均一した仕上がりが求められるがゆえに、ほとんど使われてこなかった特徴的な木目や端材に再注目。それらの素材を個性的な美しさととらえ、ふしのある「HIROSHIMA アームチェア」に、minä perhonenのカケラのパッチワークの座面を組み合わせたスペシャルアイテムを発表した。

──最近の発見みたいなことは?
深澤:なんでしょう。「Gogoro」という台湾の電気スクーター。クラウドファンディングで実現した製品で。台湾に行くと街中にバッテリーステーションが設置されていて、そこに行って自分が使っているバッテリーを入れると、新しいバッテリーが出てくる。ネットワーク化してるのがかっこいい。今、けっこう評判ですよ。

──知らないとまずい感じですか?
深澤:多分。台湾とドイツで売っています。これからパートナーが増えていくと思うので、オートバイ界のアップルになると思います。クルマの運転ができれば乗れるし、2人乗りもできる。たしか、スマホで有名なHTCのデザイナーが手がけたプロダクトだって聞いたことがあります。

──乗り物、好きなんですね。
深澤:デザイナーだから好きという感じで、いわゆるカーマニアではないです。

──クルマ乗ってますか?
深澤:アストンマーティンに乗ってて。いいデザインだよなっていうときには、わりと思い切って買いますね。逆に言うと、そういうときしか気持ちが動かないというか。ほとんどモノを買うことがないというか。

──最近のニュースはありますか?
深澤:ヴァルターグロピウスが設計したバウハウスのデッサウの校舎で、僕のデザインを展示している展覧会(NAOTO FUKASAWA DESIGN IN THE BAUHAUS DESSAU)があったみたいで。すごい光栄。僕はバウハウスの時代に生きてたわけじゃないけど「デッサウに入るか〜」って。そういう企画だったみたいで、作品の独り歩きはうれしいよね。記事だって、本人に聞かなくても誰でも書けちゃう時代。改めて見ると、過去の作品のけっこうレア物とかあって。Swedeseとか、driadeとか、DANESEとかで出したもの。ここに入るのは、自分としてはけっこううれしい。僕の中でニュースでした。

(20170511)

深澤直人(Naoto Fukasawa)
プロダクトデザイナー。1956年山梨県生まれ。1980年多摩美術大学プロダクトデザイン学科卒。1989年渡米、IDEO入社。1996年帰国、IDEO東京支社長。2003年NAOTO FUKASAWA DESIGN設立。「21_21 Design Sight」ディレクター。良品計画デザインアドバイザリーボード。 マルニ木工アートディレクター。2010 年~2014年グッドデザイン賞審査委員長。 2012年Braun Prize審査委員。 多摩美術大学統合デザイン学科教授。2006年Jasper Morrisonと共に「Super Normal」設立。2012年7月より日本民藝館五代目館長。

Link
NAOTO FUKASAWA DESIGN
マルニ木工

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