大人のヨユーを感じさせる「タリアトーレ」

2014年 9月 30日 09:00 Category : Fashion

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「○△□*×■●◎」。一見して泥酔していたその女は、後部座席にいる僕に向かって再現できないほど野蛮な言葉で毒づき、連れの女に羽交い締めにされながら、軽く地面から浮くや、蹴りのポーズをとった。映像はその刹那、スローモーションになった。ある年の師走。道にはタクシー待ちの酔っぱらいが溢れていた。

僕が行き先を告げると、運転手はイヤーとかウーとかうめいた。稼ぎ時のこの季節、都内の客にかまっていられないという意思がありありと伝わってきた。アクセルを踏んだのもつかの間、ほとんど路肩沿いを、のろのろと進むタクシーはいまにも停まりそうだった。クダンの悲劇はそこで起きた。女の罵声に勇気づけられたのか、運転手は意を決したようにいった。「申し訳ないけど、降りてくれないですかね」。

断固拒否すべきだったのだけど、すっかり冷静な判断能力を失っていた僕は、あまりに情けなさそうな顔と声に気圧されて、次の交差点で降りた。そうして編集部のソファで夜を明かした。

書いていたらまた腹が立ってきたが、いまにして思えば、僕にも落ち度があったなぁと反省するところがないでもない。ピーコートにジーパン、スニーカーというスタイルで童顔と来れば、ナメられても仕方がない。メンズファッションの世界では当たり前のようにいわれていることだが、身なりはヒトトナリを表すのだ。もし、タイドアップにカシミアのチェスターフィールドなんて出で立ちだったら、こんな憂き目にあうことはなかったはず。少なくとも、末席ながら業界で禄を食んでいる身としては、この現実を厳粛に受けとめなければならない。

積年の恨みを晴らすべく、本格的な冬を前に手に入れたのがタリアトーレのコートだ。1998年創業と歴史こそ浅いものの、ウエストを絞り込んだグラマラスなシルエットに象徴される卓越したテーラリングでメキメキ頭角を現してきた気鋭である。

毛足の長いそのファブリックは旬なカントリー・スタイルの仕上げにぴったりだが、なにより大人のヨユーを感じさせるのがよかった。そして袖を通せば貧相な身体も鍛え抜いたそれに。

シルクやアルパカ、アンゴラといった天然素材にあえて化繊を混紡することで、軽やかな着心地も手に入れている。レザーのくるみボタンもいい。こういう細かいところで手を抜くと、とたんに安っぽい印象になってしまうのだ。105,840円(タリアトーレ)

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