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普遍と不変の違いとは

2015年 4月 25日 08:00 Category : Fashion

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一口すするやいなや、ぼくの顔まで煮詰められてしまった。それまでの口福も、ほのぼのとした会話もきれいさっぱり失われて、周りのざわめきがきゅうにボリュームを上げた。

ひさしぶりの親孝行で下町のうなぎやへいった。うなぎといえば夏がうまいとばかり思っていたら、じつはそれは閑古鳥が鳴く、暑いさかりの鰻屋に頼まれた平賀源内の作戦で、たっぷりと脂がのるのは冬だという。呑みながらだったので、いささかくどく正月にその説を披露したら、そんなことは知っているとばかりに老親は揃って鼻を鳴らした。んで、じゃあ浅草にいい店があるから今度いこうと調子のいいことをいって短い冬休みは終わった。

日常の忙しさが戻ってくると記憶の片隅に追いやられてしまったのだが、歳をとると毎日が日曜日。近々呑もうよ、という挨拶代わりの台詞は通用しない。東京の北からやってくる念のようなものに気づいてしまったぼくは仕方なく、まだ手袋が必要なある日に招待した。

ほろほろと口でとろけて、鰻の旨味が口に広がる。やっぱり冬はうまいね、なんて知った風なことをいう愚息を白い目でみつつ、鰻には満足してくれたようだ。よかったよかった。ほろ酔いかげんのぼくはひそかに地元で呑み直そうとたくらんだ。ふたりは感づいたのか、すこしでも酒量を減らそうと画策したのだろう、お茶を飲みたいとエキナカの店に入ろうとするので、だったらと連れていったそこは老舗の喫茶店だった。原価なんてたかが知れている豆をケチって、そんなに傾いているのだろうかと心配になって見渡したくらいだ。

もっぱらファッションの世界がメインだけど、それなりの年月、さまざまな取材をしてきておぼろげにわかってきたのは、老舗は普遍だが、不変ではないということである。時代のニーズに応えた、シルエットを見直すなどのわかりやすいブラッシュアップだけをいっているのではない。ときが経てば手に入る材料だって移ろう。水質が異なれば、そこで織られる生地や鞣される革も違ってきて当然だ。一見変わらない定番だって、糸を気持ち太くするとか、鞣し材のレシピをあらためて吟味するとかの工夫が必要になってくる。つまり、見えないところで不断の努力を怠らないスタンスが、存在を普遍にするのだ。

そういう気概が微塵も感じられなかった喫茶店の店主に、爪の垢を煎じて呑ませたいと思ったのがスピワック。1904年にニューヨークで創業した老舗で、米軍の納入業者としても知られる。ミルスペック、メイド・イン・USAを二大看板とした名門中の名門だ。

ビームス別注となるフライトジャケットは1970年代のデッドストック(もちろん当時のミルスペック基準をクリアしたもの)を使用している。この褪せた色合いがたまらない。さらにおなじみの中綿を排し、メッシュライニングで仕上げることでこれからの季節にふさわしい軽やかさも手に入れた。

かすれたような風合いはデットストック生地。57,240円

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