今週末見るべき映画「ブルージャスミン」

2014年 5月 9日 08:00 Category : Garbo

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よほどのショックがあったのか、心の病なのか、電車で、独り言を呟いている人に出会うことがある。明瞭だが、意味は不明。別に危害を与えるわけではないので、やり過ごしてはいるが、なんとも哀れ。時代のせいか、近頃、こういった人が、とみに増えているように思う。

映画「ブルージャスミン」(ロングライド配給)のヒロイン、ジャスミン・フレンチは、ニューヨークの社交界で華々しい日々を過ごしていたが、夫の投資詐欺まがいの事業が破綻、没落する。ジャスミンは、サンフランシスコに住む、同じ里親で、血の繋がっていない妹の家にたどり着く。ジャスミンは、過去の栄光を再び取り戻そうと努力するが、うまくいかない。結果、所構わず、ブツブツと独り言を呟くようになる。ウディ・アレン監督は、ジャスミンの精神が徐々に崩れていく過程を、過去と現在を緩急自在に繋ぎながら、容赦なく綴っていく。


自尊心たっぷり、プライドが高く、だから、鼻持ちならないジャスミンを、バカな女だと笑いながら見つめる観客もいることと思う。一見、喜劇仕立てながら、実は、苦く、切ない。全編を彩る音楽は、1935年にアメリカで大ヒットした「ブルー・ムーン」。まだ若かったリチャード・ロジャースの曲に、ロレンツ・ハートが詩をつけた。「夢にまで見た恋人が現れた時、お月さまが金色に光輝く。もう一人じゃない」といった歌詞である。映画の内容と音楽がまことに、皮肉な組み合わせ。ウディ・アレンの面目躍如の選曲だ。

結構、設定は、テネシー・ウィリアムズの戯曲「欲望という名の電車」に似る。初演は1947年。1951年に映画化され、ヴィヴィアン・リーがブランチ・デュボアに扮し、マーロン・ブランドがスタンリー役で、エリア・カザンが監督した。ブランチは、南部の没落した農園から、妹の住むニューオーリンズに来る。ブランチは、誇り高い人生を貫こうとするが、妹の夫、粗野なスタンリーに陵辱され、精神を病むといった展開である。かつて、文学座の舞台で、杉村春子の演じたブランチを何度か見て、うまい女優さんだなあと感心したことを、ふと思い出した。

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