デザイナー長浦ちえ氏が語る、「水引」の魅力

2014年 6月 26日 08:00 Category : Garbo

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結納、婚礼、正月など、人生の目出度いシーンには、祝儀袋やお飾りの形で、必ずといっていいほどお目見えする水引。紅白、金銀、金赤と眩しいばかりの色彩が格調高雅で、幸せな気持ちを倍増してくれる。むろん、慶事だけでなく弔事の儀式にも使われるが、例えば、固く結ばれて解けない“結切り”の水引には、文字通り、婚礼では「離れない」ことを、弔事では「二度と繰り返さないように」という願いが込められていて、現代の風習には欠かせないものだ。


古代日本では、神事に供える供物を束ねる紐として、穢れなき神聖とされた白一色のみが使われていたという水引。現在、全国の約70%の生産を担う長野県飯田市をはじめ、水引の産地は日本全国津々浦々、各所にあり、思い浮かぶのは職人たちの存在だが、今回お届けするのは、福岡を拠点に活躍する水引デザイナー、長浦ちえ氏のインタビューである。
先のとおり、本来、水引は慶弔の場面でのみ使用されることが多いが、彼女が提案するのは、「今の暮らしに寄りそった水引のあるライフスタイル」。基本の結びに独自のアレンジを用いて、ユニークなプロダクトを生み出している。「極論、水引は“LOVE&PEACEなコミュニケ―ションツール”」と言う彼女に、その魅力、そして、“水引のあるライフスタイル”とはどんなものか、たっぷり語っていただいた。

セーヌ川にかかる橋の上で、号泣したことも…。もがいたパリでの経験が私の原点

「水引との出会いは、本当に偶然で。ある日、求人誌を見ていたら、見慣れない“水引デザイン”の文字が飛び込んできたんです。作る上での背景に、確固とした日本文化があったこと。それが魅力で飛び込んでみました」。武蔵野美術大学の油絵科を卒業後、イラストを出版社に売り込み、フリーランスで活動していこうかと思っていた矢先、企画メーカーに就職が決まり、水引デザインに携わることになった。


「コンセプト設定から商品デザイン、パッケージに至るまで、水引デザイナーとして、水引商品開発全般に携わりました。営業の意見や数字データなども見ながら分析して、自分なりの答えを導き出す作業が楽しくて。SPのお仕事は、“業界初!”といった挑戦の連続でスリリングな場面も多かったのですが、その分やりがいも大きく、自分が携わったものが電車内や駅の大きな広告になったものを見た時は、本当に嬉しかったですね」。

水引との偶然の出会いをかけがえのない必然に変えたちえ氏は、2004年に渡仏。「水引をパリで広めたい!」一心で、現地の日本料理店や雑貨店に飛び込み営業をはじめた。右も左も分からない中、しかもフランス語もままならない状態。現実はきびしかった。届くはずの材料が日本から届かなかったり、うまくいかない初期は焦りと悔しさで、「ノートルダム大聖堂が見えるセーヌ川にかかる橋の上で、ひとり号泣したこともありました」。

「電話ではすぐに切られてしまうので、アプローチしたい店には足を運び、顔を覚えてもらい、“決して怪しい者ではない”と安心していただく(笑)。この段階までいくと、改めてアポイントを入れるということをひたすら続けていましたね。暗中模索でしたが、一縷の望みをかけました。分からないながらも、体当たりでチャンスをつかみ取っていく。この頃の経験は私の原点です」。

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