今週末見るべき映画「シャネル&ストラヴィンスキー」

2010年 1月 15日 10:00 Category : Garbo

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ロシアの音楽が好きである。かつての前衛的な音楽、たとえばイゴール・ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」などは、いまや現代音楽の名曲のひとつ。ヒューバート・ロウズによるジャズ・フルートもいいが、もちろんオーケストラによる演奏も色彩豊かで、名演は多い。 ストラヴィンスキーは、亡命中のパリで、ココ・シャネルと会っている。そして、それが映画になった。昨年公開されたシャーリー・マクレーンの「ココ・シャネル」、オドレィ・トトゥの「ココ・アヴァン・シャネル」に続いてココ・シャネルが登場する映画は、ストラヴィンスキーとの交情を描いた「シャネル&ストラヴィンスキー」(ヘキサゴン・ピクチャーズ配給)である。

シャネルとストラヴィンスキーとの関わりだけに的を絞った映画だけに、はたしてどのような作品か、大きな興味で見入ったが、これが期待以上のなかなかの出来であった。 1913年、ストラヴィンスキーのバレエ曲「春の祭典」がパリのシャンゼリゼ劇場で初演される。拍子や調性が目まぐるしく変化する、前衛的な音楽である。ストラヴィンスキーは、すでに「ペトルーシュカ」や「火の鳥」のバレエ曲で、成功を収めている。バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)のセルゲイ・ディアギレフが抜擢、のちに天才ダンサーと言われたニジンスキーの初の振付、舞踏による公演であったが、この前衛的な音楽、バレエの常識を打ち破る振付に、当時の観客は怒る狂う。 なかには、ブラボーと叫ぶ観客もいたが、おおかたの評価は厳しいものであった。おもわず、ニジンスキーとののしり合うストラヴィンスキー。そのようななか、じっと音楽を聴いていた観客のひとりが、ココ・シャネルであった。7年後、シャネルとストラヴィンスキーは、パリで再会する。 映画は、シャネルとストラヴィンスキーとの関わりに焦点を絞って展開する。不評に終わった「春の祭典」に再び手を加えるストラヴィンスキー。すでに成功を手にしたシャネルは、愛した男性ボーイ・カペルを事故で亡くしたばかり。シャネルは、かつてなかったような香水を作ろうと奔走する。

シャネルを演じたのは、現在のシャネルのモデルで女優でもあるアナ・ムグラリス。シャネルのベーシックなモノ・トーンのかずかずの衣装の着こなしは、凜として気迫に満ち、その洗練さに目を奪われる。 なによりもの見どころは、シャネルとストラヴィンスキーのともに感じあう才能への敬愛である。少ない会話から、ともに刺激され、新しい創造への力とする気配がたっぷりと窺える。不倫のドラマではあるけれど、濃密な心理劇の結構を備えている。 メゾン・シャネルが、映画製作に協力する。衣装や調度、アクセサリーなどが提供され、シャネルの優雅な世界が、リアリティたっぷりに描かれる。シャネルを描いた、それぞれ個性的な三つの映画のなかで、シャネルの性格、生き方がストレートに伝わってくるのが本作ではないかと思う。

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