今週末見るべき映画「恋するベーカリー」

2010年 2月 19日 10:00 Category : Garbo

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今年の第82回アカデミー賞の主演女優賞に、「ジュリー&ジュリア」でノミネートされたメリル・ストリープの新作「恋するベーカリー」(東宝東和配給)。 原題は「複雑な、込み入った」といったほどの意味。日本でのタイトルからは、パン屋さんを舞台にした若者向けのラブ・コメディを想起してしまう。もちろんコメディではあるが、離婚経験を経て、子育ての終わった初老女性の、複雑で微妙な生理と心理を描いて、あきさせない。

たしかに、やや複雑な、込み入った状況が続出する。そこにメリル・ストリープの軽妙洒脱、達者な演技が、やや苦めのほどよいユーモアにくるまれて展開する。 10年前に離婚、三人の子供を立派に育て上げたベーカリーの経営者をメリル・ストリープが演じる。あるきっかけで、離婚した夫と再会、猛烈なラブコールを受ける。「正式に不道徳な不倫関係」と思いつつ、別れた夫と関係を修復しそうになる。夫役はアレック・ボールドウィン。あきらかにメタボ、糖尿病を抱えながらも、男のエゴさ加減を熱演する。かつての風貌は消えたとはいえ、初老男の色気はじゅうぶん。弁護士役だから、口は達者、未練たっぷりに元妻を口説く。

さまざまな喜怒哀楽に出会う。後ろめたさを感じながらも、元の夫の口説きにまんざらでもない。また、自宅を改築する計画をめぐって、やはり離婚歴のある、物静かな設計デザイナーといい雰囲気になっていく。扮するのはスティーブ・マーティン。リメイクの「ピンクパンサー」のドタバタとはまるで異なる、温和で真面目、シリアスな役どころ。 三人の子供たちとの仲は、やや疎んじられることもあるが、おおむね問題はない。いまさらパパなんていなくてもいいといった、時代の雰囲気も巧みに描かれる。長女には、いい性格のフィアンセもいる。そのような状況でのメリル・ストリープの表情が、千変万化する。目尻に小じわ、いささか初老の哀れさを示したかと思うと、まるで恋する少女のように、いきいきとした笑みもたたえる。どのような役どころでも、完璧な演技、見とれるほどである。 メリル・ストリープの実年齢は60歳、映画での設定も実際の年齢とほぼ同じだろう。好きな言い方ではないが、いわゆるアラカンの世代である。仕事に成功し、子育ても終了、友人たちともきわどいおしゃべりをする余裕さえある。ふと、いまの自分に欠けているものは何かと考えているはずである。長く独身の身である。男の肌のぬくもりであることは容易にみてとれる。そして、年齢相応の自らの新しい生き方を選ぼうとする。 経済的な事情がないせいか、ドラマの背景には、いささか不満がなくもないが、何歳になっても、より幸せを求めるポジティブな生き方からは、学ぶものは多い。脚本、監督はナンシー・マイヤーズ。「プライベート・ベンジャミン」の脚本でブレイク、「ハート・オブ・ウーマン」や「恋愛適齢期」を監督、女流ならではの、女性たちの微妙な心理を、きめの細かい洗練された演出で描ききる。

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