今週末見るべき映画「NINE」

2010年 3月 17日 10:00 Category : Garbo

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「人生はお祭りだ、いっしょに生きよう」。このセリフのあとに、すてきなラストシーンがある。フェデリコ・フェリーニが「8 1/2」を撮ったのは1963年。もう47年も前になる。マルチェロ・マストロヤンニ扮する映画監督グィド・アンセルミの創作の苦悩を、現実と幻想を交錯させながら、豊穣なイメージで描いた、映画史に残る傑作である。 この映画「8 1/2」をもとに、タイトルは「NINE」、トミー・チューン演出で、ブロードウェイでミュージカル上演されたのが1982年。これが大ヒットした。日本の小劇場で、感性豊かな演出を披露したデヴィッド・ルヴォーが、ロンドンとブロードウェイで「NINE」を再演、これまた評判であった。 この評判のミュージカル「NINE」の映画化は、当然の流れだろう。オリジナルの舞台とは、いささかの違いはあるが、骨格はほぼ舞台の設定と同じ。脚本は、「ザ・プレイヤー」のマイケル・トルキンと「イングリッシュ・ペイシェント」でアカデミー賞の監督賞を受けたアンソニー・ミンゲラ。映画「NINE」(角川映画、松竹配給)は、このアンソニー・ミンゲラに捧げられる。

(C)2009 The Weinstein Company. All Rights Reserved. 映画「NINE」の監督は、「シカゴ」のロブ・マーシャル。見せどころ、聴かせどころのツボを心得た手腕は、さすがである。有名な女優たちが、ズラリと顔を揃える。いずれも、ごひいきの女優ばかり。マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、ニコール・キッドマン、ソフィア・ローレン、ケイト・ハドソン、ファーギーが、歌い、踊る。もう、これだけで、わくわくドキドキする。 舞台は1960年代のローマ。著名な映画監督がスランプに陥る。映画製作の話は進むのに、監督自らが執筆する脚本は、まだ出来ていない。タイトルは「イタリア」、壮大な歴史を描いた大作、ということが発表されるだけである。プロデューサーや出資者がイライラするなか、監督は逃げ回る。そして、過去や現在の女性たちをめぐって、監督の現実と幻想が描かれる。

音楽が、なつかしく、いい。かつてアドレアーノ・チェレンターノが歌ってヒットした「24000回のキス」が流れる。1960年のサンレモ音楽祭のグランプリを「ア・ル・ディ・ラ」と争った、なつかしのカンツォーネだ。劇中、映画製作の打ち合わせをするレストランのシーンでは、「クアンド・クアンド・クアンド」が歌われる。これまたなつかしいカンツォーネの名曲。 オリジナルの作詞作曲は、フェデリコ・フェリー二に傾倒するモーリー・イェストン。ロックやラテン・ビートのナンバーは迫力たっぷり。また、しっとりと歌われるバラードは、情感があふれ、音楽は精彩に富む。 苦悩する映画監督グイドには、「マイ・レフト・フット」と「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」でアカデミー賞の主演男優賞を二度受賞したダニエル・デイ=ルイスが扮する。 妻や愛人、母親、女優など、グイドをとりまくさまざまな女性が、現実に、そして思い出や幻想のなかに登場する。しかしながら、映画製作はいっこうにはかどらない。そのようなドラマのなかに、かずかずの歌と踊りが挿入される。右足を高く上げ、セクシーに踊るペネロペ・クルスにうっとり。コメディー女優で有名なゴールディ・ホーンの娘ケイト・ハドソンが、若々しく、いきいき、迫力たっぷりに群舞をリードする。もう、これでもかこれでもかと見せ場の連続。不満ではないが、もっと長く、歌って踊るところを見ていたいと思う。 ストーリーは、ストレス続きの男の、勝手な恋愛沙汰のねじれが軸となるが、そこに、男の幻想のかずかずが浮かびあがってくるというだけのもの。映画として、フェデリコ・フェリーニのオリジナルとを比較する方もあろうと思うが、それは野暮というもの。これは、ずらりと勢ぞろいした、魅力いっぱいの女優たちの歌と踊りを、ミュージカル映画として楽しむ、エンタテインメントなのである。そして、たっぷり、楽しめる。

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