今週末見るべき映画「シリアの花嫁」

2009年 2月 20日 10:00 Category : Garbo

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シリアとイスラエルの国境、ゴラン高原に住む、ある家族の結婚式の1日を描く「シリアの花嫁」(シグロ、ビターズ・エンド配給)を見た。

ゴラン高原はもともとシリアの領土であった。1967年、第三次中東戦争でイスラエルがシリアのゴラン高原を占拠する。ゴラン高原一帯に住むシリア人は、イスラム教の少数であるドゥルーズ派である。イスラエルの占拠後、イスラエルの国籍を得る人もいるが、多くはシリア人であることを主張、その結果、ドゥルーズ派シリア人の多くは、国籍を失ってしまう。 シリア人の血を守るために、それも少数派のドゥルーズ派にとっては、伝統的に同族の結婚を続けている。同じシリア人と結婚することは、無国籍の立場から、国境線を管理する国連の事務所を通り、シリアに入国することになる。そして、いったんシリアに入ると、それは、ふたたびゴラン高原には戻れないことを意味している。イスラエルとシリアが和解、ゴラン高原がシリアに戻ってこない限り、である。 映画は、イスラエルとの国境近くに住む、さまざまな問題を抱えている家族の現実と和解を描いてはいるが、ことはこの占領された地域だけの話ではない。監督のエラン・リクリスは語る。国の境界だけが境界ではない、伝統や習慣、宗教や偏見なども人間を縛る境界である、と。 たしかに状況は、引き裂かれたシリアを描いて悲惨ではある。しかし映画は、若い世代、ことに女性の力に未来への希望を託して、明るく、そしてコメディ風、むしろ楽観的に描かれる。 結婚する妹のために、何かと気遣う姉アマルを演じるヒアム・アッバスという女優が、妹の無事な結婚に奔走、うまい演技をみせる。保守的な夫との不和にもかかわらず、過激な親シリア派の父親と、勘当同然の兄との間を取り持とうとする。また、イスラエル警察に掛け合って、花嫁を国境からシリアまで送れるよう、尽力する。アマルとはアラビア語で「希望」を意味する。 国境では、花嫁の出国をめぐってのトラブルが起こる。それでも、過去の慣習やしがらみをこえて、行動するのは女性たちである。

イスラエルとガザとの戦闘状態は、いまなお続いている。映画のラストシーンでみせる、花嫁と姉の表情が、すべてを物語る。監督のエラン・リクリスが、映画「シリアの花嫁」に託した思いを、ことに女性に託した希望を、みてとってほしい。

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