今週末見るべき映画「サガン 悲しみよ こんにちは」

2009年 6月 5日 10:00 Category : Garbo

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「ものうさと甘さがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しい、りっぱな名をつけようか、私は迷う」(朝吹登水子・訳)。小説「悲しみよこんにちは」の書き出しである。書いたのは、わずか18歳、若くしてベストセラー作家となったフランソワーズ・サガン。その波乱に満ちた一生を描いた「サガン 悲しみよ こんにちは」(ショウゲート配給)を見た。

若くして富と名声を得たサガンは、スキャンダルもたくさん。巨万の富を稼いだけれども、晩年には借金さえ残ったという。それでも自分に忠実に、思うまま自由に生きた一生であったと思われる。もちろん、愛を求めての人生であったが、サガンは晩年、惨めな人生であったと振り返っている。 1954年、処女作「悲しみよこんにちは」がベストセラーになる。もちろん映画にもなった。オットー・プレミンジャーが監督、ソウル・バスの手になるタイトルデザインは有名である。若かりしジーン・セバーグが主演。小説だけでなく、映画もヒットし、サガンは一躍、時代の寵児となる。 私生活は、派手な行動、たくさんの取り巻きを引き連れてのパーティ三昧。政治家や著名な文化人たちとの幅広い交際ぶりは、マスコミが逐一伝えることになる。車が好きでギャンブルも大好き。好きな車の運転中、交通事故で瀕死の重傷を負う。このときの治療薬のモルヒネがもとで、死ぬまでモルヒネとのつきあいが続くことになる。 やがて結婚、離婚。そして、再婚して息子を産む。しかもまた離婚。天性の才能で、多くの小説や戯曲を執筆、それぞれの映画化も多い。結果、いくら稼いでも、お金は残らない。出費もまた、ケタ違いであった。ドーヴィルのカジノで遊ぶ。カード博打で損した1万フランを、ルーレットでたちまち800万フランにして取り返す。ドーヴィルに別荘を構える。アメリカでも「悲しみよこんにちは」は売れる。そして500万フランの印税を手にする。しかしサガンは、まったくお金には執着しない。

そんなサガンの私生活を、サガンの鋭い観察による独白を交えながら、時にはゆったり、時にはスピーディに描いていく。映画「エディット・ピアフ 愛の讃歌」に出ていたシルヴィ・テステューがサガンの少女時代から晩年までを演じる。写真などで見るサガン本人によく似ていて、まるでサガンの記録映画を見ているような錯覚を覚える。 サガンの人生を綴るいくつかのエピソードの冒頭、サガンの独白が挿入されるが、これが秀逸。重傷の自動車事故のあと。「事故で分かった。人は弱く孤独だ」。最初の結婚に失敗した時は「恋の始まりはすてきだ。その後は最高、終わりはあがいて、疲れるだけ」。2度目の離婚では「恋の挫折は自分自身の挫折である」。そして、経済的に破綻すると、「破滅しようが、勝手でしょ?」。サガンは自分に忠実である。「何歳からでもやり直せる。生きるしかない…」。享年59歳。墓銘碑は自らが生前に書いた「サガンここに眠る 癒されずに」。 監督はディアーヌ・キュリス。舞台女優から映画監督になった才女で、「女ともだち」「年下のひと」などを撮る。撮りようによっては、あざとくなりかねない本作を、事実に基づいて再構成、サガンの心理描写、サガンからの視点に力点をおいた演出は、見るものを引きつける。 華やかで繊細、多くの読者を魅了した著名な女性作家の一生を描いて、見どころがたっぷり。あらためてサガンの小説や戯曲を読みたくなった。

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