今週末見るべき映画「クリーン」

2009年 8月 28日 10:00 Category : Garbo

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2000年に傑作「感傷的な運命」、最近では「夏時間の庭」を撮ったオリヴィエ・アサイヤスが、2004年に元パートナーのマギー・チャンを起用、厳しい現実に向き合いながら、ロック歌手になることを願い続ける女性を描いた「クリーン」(トランスフォーマー配給)を見た。

人には、さまざまな悲しみがある。愛する人との別れ、幼い息子と共に暮らせない状況、歌手になる夢の叶わないもどかしさ…。 マギー・チャン演じるエミリーは、ロック歌手だった夫をドラッグで亡くす。夫の両親や友人たちから、暗に夫を殺したのはエミリーのせいと思われている。そして、幼い息子を育てることもできないまま、歌手になる夢を持ち続けている。 夢を叶えるには、ドラッグを断ち、まっとうな人生を歩むことである。エミリーは、気丈夫に、過酷な現実にひるまず、息子といっしょに暮らすために、ひとまず、職を得ようと決意する。 夫の父親役にニック・ノルティ。はじめは、息子の死を、義理の娘エミリーのせいと思うが、孫を育てながら、なんとか、エミリーのために力になろうとする。頼りなげながらも、エミリーに示す思いやりは深く、老いてますます、達者な演技である。

エミリーは、歌手として飛び抜けた才能があるわけでもない。ドラッグに浸り、子供を育てようともしなかった。夫を亡くしたあとで、子供が生きがいというのも、身勝手な話である。いささか気強いけれど、欠点も多い女性である。ただひたすら、ストイックに自分自身を変えようとする。 そんなヒロインを、オリヴィエ・アサイヤス演出は、下手な小細工はせず、正攻法で描く。 全編を彩るブライアン・イーノによる音楽は、控えめながらも、ヒロインの心象風景を映し出すかのように響き、秀逸である。 人は多くの欠点、身勝手さも合わせ持つ。強いけれども、弱い部分もある。そして、よりよい方向に向かって、歩んでいくことも出来る。かつてのパートナー、マギー・チャンに捧げたとも言える、オリヴィエ・アサイヤスの心意気がいい。映画が伝えるのは、夢をあきらめないこと、そして、信念を捨てないこと。

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