アキッレ・カスティリオーニ 自由の探求としてのデザイン

2008年 1月 9日 11:30 Category : Interior

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 イタリアの巨匠、アキッレ・カスティリオーニ。日本に知られている彼の代表作品というと、トラクターの座面を使ったスツール「メッツァードロ」や、照明器具「アルコ」などだろうか。これらを眺める限りは、彼は突飛なアイデアを生み出すデザイナーという風にしか映らない。

 しかし実のところ徹底した合理主義者であり、モダニストだった! そんな“カスティリオーニ(兄弟)流”のデザイン思想が詳しく書かれた本が『アキッレ・カスティリオーニ 自由の探求としてのデザイン』である。

 まず、表紙の写真を見て欲しい。紛れもなく、トイレットペーパーの芯である。


 1989年のアスペン国際デザイン会議の際に、アキッレは細長い帯状の用紙に自作の図面をすべて載せて、それを入れる容器としてトイレットペーパーの芯を利用したという。これを聴衆へのプレゼントとして配った。トイレットペーパーの芯は安価であるうえ、長い紙を折らずに収納できるという面で、非常に優れた「プロジェクト」だと評価したのだ(本書より要約)。まるで日本古来の絵巻物を彷彿とさせるが…。

【生前、アッキレが愛用していた机。製図台を水平にして使っていた 撮影:多木陽介】

 これに象徴されるように、物資が不足する戦後の時代に「安価で有用な物」をつくることを、アキッレは自らの使命としたようだ。デザインとは装飾的な付け足しのことではない。物のフォルムと機能は常に結びついていなければならない。人間生活のある場面と直結していてこそ、物の存在動機はある。

 つまり物のフォルムとは最初に考えるものではなく、より無駄のない、よりシンプルな方向へと熟考されたうえで生まれ得るものだった。とはいえ無骨であってはならない。そのフォルムが詩的であることも彼は忘れなかった(本書より要約)。

【作業室の様子。各プロジェクトの図面などが収められた箱で、壁は埋め尽くされている。 撮影:多木陽介】

 例えば照明器具に関しても、アキッレは器具本体よりも照明効果を何より重視した。つまり「何を、どのように、どれだけ見たいか」を、照明を考える際の基準とした。しごく当たり前のことのようだが、それを明解に整理したうえで、建築空間における人工照明を考えたデザイナーは意外と少ない。彼曰く「デザインとはなるべく控えめな、見えないくらいの存在であるべき」だという(本書より要約)。

【カスティリオーニスタジオの風景。斜め45度に置かれた大鏡によって、まるで奥に書斎があるように映るが、実は右手に折れた突き当たりにある 撮影:多木陽介】

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