常盤新平―遠いアメリカ―展

2015年 2月 26日 10:00 Category : News

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・第3章 ときわの流儀 エッセイ、書評
1980年前後だろう、常盤さんは、青山南さんと川本三郎さんといっしょに「ハッピーエンド通信」を刊行していた。一部、50円。次々と、アメリカ、ニューヨークに関するエッセイを書く。「ニューヨーク五番街物語」、「アメリカの編集者たち」、「コラムで読むアメリカ」、「ニューヨーカーの時代」…。カード雑誌「シグネチャー」の連載したときの生原稿がある。「ヴォーグ」という雑誌や、グリニッチビレッジについての原稿だ。

常盤さんは、時代小説もお好きだった。「池波正太郎を読む」という著書もある。池波正太郎さんからの手紙が展示されている。

身辺雑記も多く書かれた。「ダカーポ」に連載された「おとなの流儀」、「銀座旅日記」など。山の上ホテルがごひいきで、「山の上ホテル物語」という名著もある。

自ら、山口瞳さんを師と仰ぐ。著書の「国立の先生 山口瞳を読もう」は、師への敬愛が滲む、すてきなエッセイだ。山口さんから贈られた鉄道時計、山口さんの字で「新平」と書かれた湯呑み、やはり山口さんの筆になる表札「常盤新平」。

・第4章 片隅の人たちを描く
無名の、市井の人たちを描く常盤さんの目は、とても優しい。1990年代に書かれた小説たちが、常盤さんのあたたかな眼差しを物語る。「頬をつたう涙」、「冬ごもり」、そして、2012年、晩年に書かれた「たまかな暮し」。もっと数多く、書ける作家だったと思う。

・エピローグ 町田での日々
1994年、常盤さんは西葛西から町田に転居する。町田について、書く。「昭和がまだ色濃く残っている、つましい人たちの住むスモールタウンだ。田舎町であり、同時にしゃれた街でもある。その釣り合いがよい」と。

指物師・井上喜夫さんの作った文机がおいてある。常盤さんの「宝物」だ。競馬中継を見ながら、仕事場でタバコを吸っている常盤さんの写真。山口瞳さんから贈られた還暦祝いの赤いベスト。腕時計。名前入りの原稿用紙。大きな湯呑みに入ったサインペンや万年筆。文机の上には、死後、刊行された3冊のエッセイ本。「私の『ニューヨーカー』グラフィティ」、「東京の片隅」、「いつもの旅先」。文机の前に座る主だけ、いない。

直木賞を受けられる前に仕事で、常盤さんの原稿をもらったことがある。以来、何度か、すてきなエッセイを書いてもらい、2002年から、「ザ・ニューヨーカー」にちなんだ連載をお願いした。2009年、定年退職する時、「連載をやめましょう」と申し出られたが、「死ぬまで、書いてください」とお願いした。その通り、書いてくださった。もっと、お書きになりたかったことがあったと思う。なんでもご存じの、凄い人なのに、いつも謙虚で、丁寧に接していただいた。静岡県の富士霊園にある「文学者之墓」に納骨されている。展示の終わる3月末には、出かけようと思っている。

文/二井康雄

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